文学部 日本語・日本文学科

日本語・日本文学科の概要

日本語のプロフェッショナルを育てる

 日本語・日本文学科では、日本語をあつかうプロフェッショナルを育成することを目指しています。専門的な勉強の領域は大きく言って日本語学、日本文学、日本文化の3つに分かれます。それぞれの領域にそれを専門とする教員が配置されており、ほぼ日本語/日本文学の全領域をカバーしています。「初心者」の段階から無理なく勉強を進めて行けるように配慮されています。
 その結果として、4年生の段階では「学術論文」の名に値する卒業論文を書くことができるようなレベル、すなわち「日本語/日本文学のプロフェッショナル」(少なくとも、その「タマゴ」)の域に達することを目標としています。これは決して「絵に描いた餅」ではなく、現にそのようなレベルに到達したうえで、さらなる学問の深化を目指して、本学大学院を含め各地の大学院に進学する人も少なくないのです。

日本語/英語によるコミュニケーション能力を中心に、幅広い技術と知識を備えた人を育てる

 たとえば小説一つを取ってみても、それを様々に読解するためには、いろいろな知識と大きな視野が必要となります。本学科では、あまり低次元な「専門分野」にとらわれることのないように、幅広いカリキュラムを組んでいます。
 また、日本語による「表現の技術」や「英会話」「英作文」などはカリキュラム上に多くの科目が用意されており、望むならば、英語・英米文学科の学生と同じだけの「英会話」の授業を受けることもできます。つまり、日本語であれ英語であれ、コミュニケーション能力を、とても重視しているのです。

どんなことにも対応できる「本物の教養」と感受性に優れた人を育てる

 激動の世界で力を発揮して行くためには、技術と知識だけでは足りません。さまざまな状況に適切に対応するため、自分を客観的に捉え、足りないところがあれば自ら補って行く力、すなわち成長し続ける力が要求されます。
 そのように「タフ=しっかりしている」ことこそ、本当の教養と言えるでしょう。学生の自主性を最大限に重んじる本学科の教育を通して、そのような力を身にまとうことができます。あなたの感受性がさらに本学で磨かれ、本物の教養に裏打ちされたとき、繊細でかつタフな、21世紀の人材が出現するのです。日本語・日本文学科の目指すところは、これに尽きます。

 科目の全体像は以下の通りで、学生はどの科目も自由に学べるようになっています。選択の自由度が高いのは本学の特徴の一つです。

  1. 専門基礎科目;古文や漢文を読むための基礎的な文法、語彙などを学びます。
  2. 日本語学関係科目;日本語の特性、発音、文法、方言など、日本語それ自体を学問の対象として学びます。
  3. 日本文学関係科目;古代の詩や物語から中世の和歌、近世・近代の小説など、日本語を使って書かれた芸術作品を幅広く読み、そこにある考え方や伝統、革新などについて理解を深めます。
  4. 日本文化関係科目;日本の歴史・マンガ・映像表現・サブカルチャー・民俗芸能などについて学びます。
  5. 共通科目;英語・英米文学科、日本語・日本文学科に共通する関連科目で、専門領域を補い広い視野を培うために設定されている科目です。考古学・表現の技術・データベースと解析の技術・Oral Communication・Composition・日本語教育法など。

日本語・日本文学科 専門教育科目

(1)専門基礎科目古文の基礎、漢文の基礎
(2)日本語学関係科目日本語学概論AB、日本語音声学、日本語文法論AB、日本語史AB、
現代日本語学入門、古典日本語学入門、日本語学演習ⅠA~D、日本語学演習ⅡA~D
(3)日本文学関係科目日本文学概論AB、日本古典文学史、日本近現代文学史、地域文学研究、
古代文学、中古文学、中世文学、近世文学、近代文学、現代文学、
古典文学演習ⅠA-D、近現代文学演習ⅠAB、日本文学研究A(韻文)・B(散文)
古典文学演習ⅡA-D、近現代文学演習ⅡAB
(4)日本文化関係科目日本文化概論AB、日本の歴史AB、日本マンガの歴史、現代日本マンガ論、
日本の映像表現、日本のサブカルチャー、日本の民俗芸能、中国文学概論、
中国文学講読AB、日本文化演習ⅠAB、日本文化研究AB、日本文化演習ⅡAB
卒業論文
(5)共通科目言語・文学・文化の基礎、応用言語学、民俗学、考古学、古文書学、書道AB、
海外研修ⅠAB、海外研修ⅡA-C、表現の技術AB、データベースと解析の技術、
データ解析演習Ⅰ・Ⅱ、Oral CommunicationⅠAB・ⅡAB・ⅢAB、
Advamced Discourse AB、Composition ⅠAB・ⅡAB、Academic Writing AB、
Presentation Skills、Business English、日本語教育法ⅠAB、日本語教育法ⅡAB、日本語教育法ⅡCD

基礎演習

新入生がこれから大学で学び、研究するために必要になる基礎的な能力を養うための科目です。

基礎演習基礎演習Ⅰ・Ⅱ

一般教育科目

広く教養を身につけ、視野を広げ、知的好奇心を活性化するための科目です。

キリスト教についての科目キリスト教学Ⅰ・Ⅱ、キリスト教音楽、キリスト教文化、聖書と文学
人間・社会についての科目哲学と倫理AB、法と社会AB、政治学AB、経済学AB、心と身体AB、
教育と人間AB、歴史と社会AB、現代の社会と文化AB
自然についての科目情報の科学AB、環境の科学、生命の科学AB、科学と現代A~D、
ヘルスサイエンス論
地域についての科目地域研究AB
教養演習教養演習A~Q
外国語科目英語ⅠA-D、英語ⅡAB、ドイツ語A-D、フランス語A-D、中国語A-D、韓国語A-D
保健体育科目スポーツ科学講義、スポーツ科学実技A~F

キャリアサポート科目・単位互換科目

より広い教養を身に付けるために設定されている科目です。

キャリアサポート科目キャリアデザインA-F、教職教養A-D、常識日本語AB、小論文演習、
実践英語A~D、基礎数学A~C、
単位互換
(弘大等・アメリカ・韓国)※
選択教養A~G、ListeningⅠA-C・ⅡA-C、ReadingⅠA-C・ⅡA-C、WritingⅠA-C・ⅡA-C、SpeakingⅠA-C・ⅡA-C、
韓国語ⅠA-C・ⅡA-C(聴く・読む・書く・話す)

※文学部は,現在弘前大学と単位互換に関する協定を締結しています。学生は「特別聴講学生」として弘前大学の科目を履修し,その修得単位はキャリアサポート科目・単位互換科目の「選択教養」として認められます。

専門教育科目紹介

日本古典文学

学ぶ内容

 日本語・日本文学科では、日本の古典文学に関する科目が様々に用意されています。
 これにより、受講生はいろいろな角度から古典文学を探求できるようになっています。
 具体的には、古典文学を時代ごとに学べるように、古代文学、中古文学、中世文学、近世文学に分けて科目が設けられています。各時代の代表的な文学作品を通して、その時代の文学の特徴が学べるようになっています。例えば、古代文学では『古事記』、中古文学では『大和物語』等を学ぶ講義科目が設置されています。作品の内容に沿って、時代背景を考慮しながらわかりやすく読み進めていきます。また、受講生自らが主体的に学ぶために、発表や討論を中心とする演習科目が併せて設けられています。
 また、通時的にも学べるように、「日本文学概論A・B」や「日本古典文学史」といった講義科目が設けられています。日本の古典文学がいかに展開していったか、各時代の代表的な作品を取り上げながら解説していきます。

古典文学への誘い

 古典を読む楽しみとはなんでしょうか。
 登場人物の魅力、作品の背景への興味、表現の面白さ等、いろいろ挙げられるでしょう。その一つとして、作品に登場する人物の心に触れられる点を挙げてみたいと思います。
 「古代文学」では、『大和物語』を読み進めています。有名な「蘆刈」の段は読まれた方も多いのではないでしょうか。移りゆく世において、心を通わせていながら違う人生を歩まざるを得ない男女の儚さを主題にした話です。
 前半だけご紹介しますと、難破の男女が結婚して幸福に暮らすうちに没落してしまいます。賤しい身分の者ではなかったので人に雇われることもなくていたとあります。そして、互いを思いやって別れを選び、暮らしが良くなったら訪ねあう約束をします。女は都で宮仕えをしますが、女は男のことを思いやったという内容です。
 この話で興味が持たれるのは、男女の心に焦点が当てられて物語が展開している点です。本文では「いとあはれ」という心情表現を何度も繰り返して、女が男をひたすら思いやる様を表そうとします。一方、男はというと、後半に見られる二人が再会した際の歌で「憂し」という心情表現を用いて、自らを内省する様が示されます。要は、二人の思いの方向が違っていて、そのずれがこの話の要ではないかと思われるのです。
 「ひたすら男を思いやる女」と「内省する男」という登場人物について、皆さんはどのように思われるでしょうか。今の男女に通じるものを感じるのは、私だけではないでしょう。
 このように一千年前の作品を読んで登場人物の心に触れたとき、様々な感慨が湧き上がってきます。いにしえの作品から、男女の在り方について改めて考えてみるのはいかがでしょうか。

日本近現代文学

それはアーリーモダンから

 明治時代以降に花開く近現代文学は、江戸時代から密かに準備されていたようにも見えます。
(そういうこともあり、江戸時代は現在、世界史的にはいわゆるアーリーモダンの時代として捉えられています。)
 19世紀後半の明治時代には、外国語の勉強結果も踏まえ、清新で正確な日本語散文が模索されました。
 夏目 漱石や森 鴎外など、この課程で文学者が果たした役割は大変に大きかったのです。それは20世紀初頭までに一応の完成を見て、現在私たちが自由自在に駆使する現代日本語のベースが出来上がりました。その一部は学術用語として、中国語や韓国語の中でも使用されています。

世界的な人気

 この日本語を主な使用言語として記述されたのが、近代・現代の日本文学です。
 川端 康成、大江 健三郎という二人のノーベル文学賞作家だけでなく、大正時代の芥川 龍之介や宮沢 賢治から、最近では村上春樹や多和田 葉子等、多くの作家が世界的にも高い評価を受け、大いに人気を獲得しています。
 村上 春樹を原文で読みたいという理由で日本語を勉強している人は、世界中に何十万人もいます。
 また、およそ高等教育を受けた人で谷崎 潤一郎や三島 由紀夫について知らないという人は世界的に皆無です。
 まさに日本が世界に誇る芸術分野と言ってもいいでしょう。

広範な科目群

 本学では以上のような近現代文学を勉強するために、広範な科目群を用意してあります。
 「日本近現代文学史」、「近代文学」、「現代文学」、「近現代文学演習」、「地域文学研究」等がそれに当たります。

こんな人におすすめ

 文学作品に直接興味のある人には絶対おすすめですが、またさらに広く、世界の歴史、文化、科学技術等について関心があるという人にもおすすめします。
 日本の近現代文学はそれについて考える絶好の素材、機会でもあるからです。

日本語学

日本語学とは

 日本語学とは、世界の3000 ~ 7000種類あると言われている「言語」を研究対象とする学問である「言語学」のうち、特に日本語をターゲットとして研究する分野を指します。
 世界の言語はその昔、いくつかの祖となる言語から分かれて作られてきたと考えられていますが、日本語はそういった言語間の親戚関係が不明な言語です。
 日本語学は、言語としての日本語の「音声・音韻」、「語彙」、「文法」といった特徴を明らかにするとともに、日本の歴史を扱う「日本語史」、地理的分布を扱う「方言学」等の分野があります。そして、時代的には古典語と近代語(現代語を含む)と大きく日本語を区分して扱うことが一般的です。
 この他の周辺領域として、日本語を外国語として修得する人々のための「日本語教育」や、日本語を母語として学ぶ「国語教育」とも近い関係にあります。

日本語学の魅力と学ぶことの意義

 ことばは、私たち人間のコミュニケーション手段として、なくてはならないものです。
 そして、私たちのように日本語を母語としている者の言語社会は、日本語でコミュニケーションをしているだけでなく、物事の認識の仕方や思考、あるいは、創造までも日本語でしています。私たちは知らず知らずのうちに日本語の持つ枠組みを使って生活しています。
 例えば、日本語では虹の色は「七色」ですが、2色あるいは3色という言語もあります。また、日本語で「きょうだい」というのは、男兄弟も女姉妹も両方表現できますが、英語では両方一遍に表せません。あまりにも身近にあるため、それ以外の枠組みについて考えたこともないと思いますが、実際に私たちは日本語の枠組みの中で生活しています。

古典語の研究のおもしろさとは何か?

 人が産み出したものには全て歴史があります。現在の姿はそれまでの生い立ち、積み重ねてきた紆余曲折の生き方の結果として顕れている形です。まさに人の姿と同じです。その人のことをもっと知りたいと思った時、その人の生まれ、育った環境、経歴などを知ることによって、より納得することが出来ます。現在の根拠は過去にあります。
 古典語の研究、すなわち言語の歴史的研究とは、まさにそのような人間の生き様の研究と全く同様の追求をする中で、思わぬ発見の驚きや過去の人の心情に共感して、胸を震わせる経験をすることです。
 たとえば、「現在の“カナシイ”という和語は、1000年前には“カワイイ”、“イトオシイ”だった」ということを知ったとき、どうして真逆に近い意味に変わってしまったのかを追求したいと思うでしょう。
 また、つい150年前に出来た「銀行」という漢語。皆さんは「なぜ「銀行」なのか?どうして「金行」ではないの?」と思いませんか。
 実は「銀行」という漢語は「元々、近世中国にいた宣教師の著作から幕末期に借用した語なのである」という事実を知って、驚きます。
 古代から幕末・明治までの日本語は、不思議で豊壌な世界です。いま使っていることばも20年後、30年後には変わっていきますが、その変化は人の成長、進化のようです。社会の動きに適応しながら活きていく姿を探る興奮を味わってみませんか。

現代語の研究のおもしろさとは何か?

 現代語はまさに今、実際に使われていることばを研究の対象にしています。新語や流行語、若者言葉など、本を調べても、人に効いても、ネットで検索しても、そのものずばりの答えはすぐには見つからないこともよくあります。なぜなら、その問題に気付いた人はあなたが最初かもしれないからです。もちろん、それまでに非常に近い研究成果が発表されているかもしれませんから、そこは入念にチェックが必要です。
 100年後の日本語も、今、私たちが話していることばから生まれていくのです。どのように変化していくのでしょうか?それを学問として考えます。
 また、日本語の地域差(方言)は言語と言語の違いと言ってよいほど、大きなものとして有名ですが、それを実際にフィールドワークして確めることも出来ます。本学の特徴として、東日本大震災以降、学問の力で地域と繋がり、貢献する取り組みを行っています。地域を深く理解し、地域のことばである方言の調査・研究を通して、国語教育や生涯学習という視点から方言の保存と継承について学んでいます。

こんなあなたにお奨め

 身近すぎて、当然すぎて何も問題がないかに見えるモノ・コトであっても、その裏には何かあるのではないか、それを探りたいと思うあなたに日本語の世界は知的興奮と感動を与えてくれます。

日本文化

現代日本文化

 マンガやアニメをはじめとして、現代日本文化の世界的な影響力については、誰もが認めるところです。20世紀後半から21世紀の現在にかけては日本のいわゆる「ソフトパワー」が花開いた時代と言ってよいでしょう。
 このような日本文化について勉強するために、本学では「日本文化概論」、「日本の映像表現」、「日本マンガの歴史」、「現代日本マンガ論」、「日本文化演習」など、多彩な科目を用意しております。
 たとえば「日本のサブカルチャー」では、家屋・工業製品のデザインなどについて、また、戦後の美空ひばりから現代のきゃりーぱみゅぱみゅまでのポピュラーミュージックなどについて研究します。これらの科目群の展開は長い伝統を持つ文学部としては全国的に見ても異例なほど多彩で本学の意気込みを示す分野と言ってもよいでしょう。

民俗学

 民俗学は民間伝承を通して、日本の基層文化を研究する学問です。
 「民俗学」では、口承文芸を対象にして講義を行っています。桃太郎など日本の代表的な昔話を取り上げて、その意味を明らかにしつつ、背景にある民俗的世界について探究しています。また猿蟹合戦の類話は日本だけでなく、東アジアの国々に分布しています。東アジア圏の中で日本の昔話がいかなる位置にあるかについても触れていきます。
 「日本の民俗芸能」では、日本の代表的な民俗芸能を取り上げて、その特質を考えていきます。映像資料を用いて、その実態についてわかりやすく解説します。とくに津軽地方には一人立ちの獅子踊りが多く見られます。そうした地域性についても考えていきます。民俗芸能を通して、日本の伝統文化の特質を究明していきたいと思います。

こんな人におすすめ

 多くの外国人が、日本文化にこれまで以上に関心を向ける時代になりました。
 今後、彼らに日本文化を正しく伝える仕事が重要になるでしょう。異文化交流に興味を持つ人、グローバルな見方や考え方を身につけ国際的に活躍したい人には、格好の学問領域と言えます。